1969年、ヤードバーズが解散して二つのグループが誕生した。一つはギタリストのジミー・ペイジが中心となって結成したレッド・ツェッペリン、もう一つはヴォーカルのキース・レルフが妹のジェーンらとともにスタートさせたルネッサンスだった。しかしそこで話は終わらない。そのルネッサンスは2枚のアルバムを残して空中分解してしまうが、ほどなくして再結成された同グループは、同じバンド名を乗っているものの、オリジナル・メンバーが誰もいないルネッサンスだった。
本作は71年にスタートしたその新生ルネッサンスのヴォーカリスト、アニー・ハズラムが紆余曲折を経て、2000年から断続的に活動する同バンドの最新ライヴで、2CD+Blu-ray+DVDの4枚のディスクが収録されたボックス・セットだ。2019年10月12日にアメリカ・ツアーの一環として行われた、ペンシルヴァニア州フィラデルフィア、グレンサイドにある、ケズウィック・シアターでのステージを収録しているが、まだコロナ・ウィルスの影響がない時期だけに会場に集まった観客は老いてもなお澄んだ歌声を聴かせてくれるアニーと結成50周年を迎えるルネッサンスを盛大な拍手と歓声で祝福している。このステージにルネッサンス作品のほとんどを手がけたマイケル・ダンフォード(2012年11月20日死去)がいないのが残念だが、旧ルネッサンスのレルフ=マッカーティ作曲の「アイランズ」と新生ルネッサンスの「燃ゆる灰」では、オリジナル・メンバーのドラマー、ジム・マッカーティがゲストで迎え入れられるというアニヴァーサリーにふさわしい演出が施されている。「カーペット・オブ・ザ・サン」に始まり「燃ゆる灰」で大円団を迎える全11曲のセットリストはすべてがルネッサンスの代表曲で、アニーの透き通った歌声を包み込むようなザ・ルネッサンス・チェンバー・オーケストラの演奏もまたそれらの楽曲に深みを与えているようだ。
今年の7月で74歳となるクリスタル・ヴォイスの女王、あるいはプログレッシヴ・ロック界最高峰の歌姫は、映像を見る限りではこれからもまだしばらくはその称号を維持し続けると見た。灰はまだまだ燃え続けている。(Q.I.)
0コメント