■BE BOP DELUXE / Drastic Plastic : Remastered & Expanded Edition

■BE BOP DELUXE / Drastic Plastic : Remastered & Expanded Edition
(2CD / Esoteric Recordings / PECLEC 22746 / 2021.2)

 鬼才ビル・ネルソンを中心に結成され、74年7月にハーヴェスト・レーベルからアルバム『美しき生贄(Axe Victim)』でデビューしたビ・バップ・デラックスの5枚目にして最終作となったスタジオ・アルバム『プラスティック幻想(Drastic Plastic)』(1978年2月)が、ニュー・ステレオ・ミックスと14曲のボーナス・トラックを含む2枚組となってリイシューされた。
 『プラスティック幻想』はそれまでのビ・バップ作品とは異なり、エレクトロニック・ポップを意識したアルバムで、ビ・バップのギター・オリエンテッドな音楽性を嗜好していた往年のファンからはソッポを向かれてしまった問題作。けれども今にして思えば、それもすべてビルの先見性ゆえのことで、直後にやってくるニューウェイヴ/テクノ・ポップを予見するようなシンセ・ポップ・テイストは当時としてはかなり斬新だ。デヴィッド・ボウイやロキシー・ミュージックらが打ち立てたグラム・ロックにプログレッシヴな感性をも融合させ、ポスト・パンクの潮流から出現するウルトラヴォックスやゲイリー・ニューマンらの登場を導いた功績は大きい。クイーンのプロデューサーとして知られるロイ・トーマス・ベイカーと組んだセカンド・アルバム『フューチュラマ』ではビルのメロディアスなポップ作品にロイのクイーン的なテイストが加わり、他のアーティストでは味わうことのできないスピード感あふれるブリティッシュ・ロックを聴かせてくれている。第3弾からはジョン・レッキーをプロデューサーに迎え、同時期に活躍したスティーヴ・ハーレイのコックニー・レベルのメンバーを迎え入れるなどして78年まで活動したが、本作発表後に行った数回のライヴをもって、ビ・パップは解散した。本作はビルが影響を受けたジャン・コクトーと関連のある南フランスのシャトー・サン・ジョルジュでレコーディングされ、ビルとジョン・レッキーの共同プロデュースで仕上げられている。
 ELOのジェフ・リン、ユートピアのトッド・ラングレン、バグルズのトレヴァー・ホーンらに比べると話題になることは少ないが、彼らに勝るとも劣ることのない才能が生み落とした作品群は、40年を経ても少しも輝きを失うことはない。このリイシューはそれを物語るような一枚で、本作をビ・バップ・デラックスのベスト・アルバムに挙げるファンも多い。4CD+2DVDの6枚組デラックス・ボックス・セットもリリースされている。(Q.I.)