■V.A. / RIDING THE ROCK MACHINE : British Seventies Classic Rock

■V.A. / RIDING THE ROCK MACHINE : British Seventies Classic Rock
(Grapefruit CRSEGBOX 088 / 2021.4)
 これまで多くの興味深いコンピレーションCDをリリースしてきたグレープフルーツ・レコードからまた一つ3枚組のV.A.作品が届いた。タイトルを邦訳すると『ロック・マシーンに乗れ!! 英国70年代のクラシック・ロック』。このタイトルからすると70年代のブリティッシュ・ロックの楽曲を集めたコンピレーションであることは容易に想像がつく。しかし、もしそうであれば、同じような内容のCDはこれまでもたくさん編纂されてきているので、あまり触手は動かない、という方も多いだろう。しかし、さすがコンパイルのグレープフルーツ、これは単なるブリティッシュ・ロックのコンピではない。要するに、これまでに語られてきた70年代のブリティッシュ・ロックはあまりにもステロタイプなので、そうではない選曲──つまり、有名無名を含めたアーティストのいつもながらの代表曲は置いておいて、マンネリズムを排した革新的な楽曲の選曲がなされているのがこのCDなのだ。
 彼らに言わせればこの3枚のディスクには“クラシック・ロックというジャンルをオルタナティヴにとらえ、閉塞感のあるレトロな保守主義の壁を打ち破る”という意図によって選ばれた楽曲が並べられているらしい。プロコル・ハルムは「青い影」ではなく「ロバーツ・ボックス」、ムーディー・ブルースは「サテンの夜」ではなく「アイム・ジャスト・ア・シンガー」、ザ・フーは「サクセス・ストーリー」、ジェスロ・タルは「バングル・イン・ザ・ジャングル」といったように、いつもとは違う彼らの表情が見える選曲は、確かにこれまでリリースされてきた数多のコンピものとは趣が違う。
 ラジオから流れるのはいつも同じアーティストの同じ曲ばかり。そこにアーティストの本質がないことにある種の苛立ちを覚えるという。彼らは続けて言う。“この『Riding The Rock Machine』には、ブリティッシュ・ロックの黄金時代のヴィンテージ・サウンドが4時間(59曲)にわたって収録されている。グレープフルーツは、完璧なリフを求めて、他のレーベルが恐れるような場所にも足を踏み入れているのだ。オープニング・トラックのレインボーの曲が宣言するように、Long Live Rock'n'Roll! ” いやはや、今、この発想ができるのはグレープフルーツしかないな。(Q.I.)