ストリーミングの時代になぜわざわざCDボックス・セットを買わなければならないのでしょうか? 僕は、グレープフルーツ・レコードにその答えを見つけました。その答えはブックレットにあります。
アナログLPは、カヴァー・アートや、20分毎に裏表を替えなければならないという(疑問の余地はありますが)素晴らしい体験をするために購入される可能性があります。一方でデジタルCDの方は、TidalもしくはApple Musi(まもなく)からのロスレス・ストリーミングでは、あまり改善されないものがあるかもしれません。けれどもグレープフルーツ・レーベルのオーナー、デヴィッド・ウェルズによる非常によく研究された洞察力溢れるライナーノーツを手にすれば、音楽を聴くということが万華鏡のような発見の旅に変わります。そうなのです。これは本当に優れています。そしてここに書かれているストーリーは常にあなたを探求の旅に導き、ボックス・セットそのものを超えた音楽の発見を促してくれます。
僕の場合、今回の大きな発見は、ラスティ(Rusty)の「Once Upon A Dream」という曲でした。1972年にリリースされた彼らのアセテート・テスト盤は、長い間Discogsのウィッシュ・リストに入っていたのですが、なかなか手に入りませんでした。60年代後半のビートルズ風のサイケデリック・ポップの素晴らしい曲がここに収録されているだけではなく、チェリー・レッドが全アルバムをストリーミングで聴けるようにしていることがわかりました。そして驚いたのは、そのアルバムは同じ系統の完全なポップ・アルバムで、いくつかの曲はここに収録されている曲と同様に素晴らしいものです。ストリーミングできるアルバムは、アナログ盤の音がそのまま入っていて、1曲目にはデジタル・ジッターやトランスファー・エラーがあるので、グレープフルーツが適切に処理されたCDをリリースすることを期待しています!
僕は(ポップ音楽の)底なし沼にハマっているけれど、このボックス・セットは必ずしも僕のようなオタクのためだけのものではないことを指摘しておきます。1972年のチャート上だけではなく、その先で何が起こっていたのかを知りたいというリスナーの興味も満たしてくれます。
シン・リジィ、ムーディー・ブルース、スレイド、モット・ザ・フープル、ロキシー・ミュージック、そしてイエスなど、同時代の有名なアーティストたちも数多く登場します。重要なのはこのライナーを読むことで、彼らの音楽に新たな光が当てられるということです。たとえば、バークレイ・ジェームス・ハーヴェスト。彼らが、Bombadilという偽名でシングルをリリースしていたことを知っていますか? それについてはこれを読んでください。
とはいえ、僕はあまり知られていない作品の方に魅かれます。たとえば、レイ・デイヴィスの手によるCold Turkeyの驚くべき楽曲「Nobody’s Fool」、奇妙な名前のRocky Cabbageの素晴らしいソフト・サイケデリックな「Birds Must Learn To Fly」、もっと奇妙な名前のグループ、Grobbert & Duffのマジカルな「I Am…I Think」など、ここには僕にとって新鮮な曲があります。素晴らしい作品です!
また、Rockin’ HorseがAtlantisという偽名で作ったシングルも僕のコレクションに加わりました。A面の「I Ain’t Got Time」はすでに別のコンピレーションで持っていましたが、B面の「Teddy Boyd’s Rock’N’Roll Show」というキャンベル・ロッカーをようやく聴けてとても嬉しく思いました。
もう一つのハイライトは、ニール・ハリスンのポール・マッカートニー風の「Maybe I’m Lost Without You」です。僕はこの曲をオリジナル・シングルで持っていますが、こちらの方が音がよいので、修復されたマスターテープから作られている可能性があります。これもとても興味をそそられます。ニールは、Southern Music時代に多くの曲をレコーディングしているので、そのテープが残っている可能性があると思います。
けれどもデヴィッド・ウェルズも稀に事実を間違えることがあるようで、1977年のJabberwockのシングル「Sneakin’ Snaky」にニール・ハリスンが参加していると書いていますが、これは事実ではありません。このコンピレーションのリリースを知らなかったニールに連絡して確認したところ、“それは誰か別のニール・ハリスンだったに違いない”と話していました。
このコンピレーションについて永遠に語り続けることができますが、あなたが今すぐ買いに行くためには、これ以上気をそらさないことにしましょう!(M.B)
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