■Misophone - And So Sinks The Sun On A Broken Sea

 このレコードをかけたとき、すぐに感じたのは、“ワオ、かなり前に初めて聴いたときからほとんど変わってない!”ということでした。けれどもこれはコンピレーションであり、1曲目の収録曲は確かにかなり前のままで、正確にはスウェーデンのKning Diskレーベルからリリースされた彼らのデビュー・アルバムからの楽曲であることに気がつきました。タイトルにある“水”というテーマを示しながらこのコンピレーションを締めくくる素晴らしい作品であるということを言わなければなりません。
 驚くべきことに、彼らのキャリア全体から選曲しているにもかかわらず、このコンピレーションはアルバムとして非常によくまとまっています。実際、僕はこの魅力的な英国デュオのオリジナル・アルバムをすべて探して購入しましたが、これ以上のお勧めはありません(残念ながら、日本のレーベル、Inpartmaintから発売された2枚のアルバムはまだ手に入っていません……)。
 ご存知ない方のために補足すると、ミソフォニア(misophonia)とは音嫌悪症候群で、たとえば繰り返しのクリック音や咀嚼音など、特定の音を異常に嫌悪する疾患です。そのため、Misophoneは、まるで耳を愛撫しているかのように、そして突然の反応を引き起こさないように、自分たちの音楽を恐る恐る提示しています。その結果、非常にパーソナルで、内向的なベッドルーム・フォークが生まれました。それはゆっくりと燃えるようなポップ・メロディの才能と、時代を超えたサウンドとヴィクリア調のミュージック・ホールの雰囲気をミックスしたスチーム・パンク的なサウンドです。
 けれどもソフトな演奏であっても、それ自体が反復的になり、ミソフォニアを引き起こしうるかのように、突然ギア・チェンジすることもあります。たとえば、「Ghost Of Right Wing America」は不協和音を伴うサーカスのようで、このアルバムの中でもっとも好きな楽曲です。(M.B)
Label: Another Record (vinyl + digital, https://misophone.bandcamp.com/album/and-so-sinks-the-sun-on-a-burning-sea)