■EDGAR BROUGHTON BAND / Speak Down The Wires -The Recordings 1975-82(Esoteric Recordings / ECLEC4 2750 /2021.1)
1969年に設立されたEMI傘下の新興レーベル、ハーヴェストからアルバム『ワサ・ワサ』でデビューしたエドガー・ブロートン・バンドは、エドガー(vo, g)とスティーヴ(ds)によるブロートン兄弟を中心に結成されたバンドだ。当時の日本でも彼らのアルバムはリリースされているが、ほとんど注目を浴びることはなかった。ブルースを根底に持ちながらも混沌とした60年代末期の空気を真空パックしたようなサウンドは掴みどころがなく、サイケともプログレともハード・ロックとも言い切れない音楽性は日本の音楽ファンの心には届かなかったようだ。しかし、イギリスはもとよりドイツを中心としたヨーロッパでは彼らの人気は絶大で、ライヴは常に満員だったらしい。ちなみに彼らのサード・アルバム『Edgar Broughton Band』(71)には、マイク・オールドフィールド、デヴィッド・ベッドフォード、ロイ・ハーパーが、5枚目の『Oora』(72)にはマデリン・ベルやドリス・トロイらがゲストに招かれている。
本作はそんな彼らがハーヴェスト・レーベルを離れてから発表した6作目から9枚目までの4枚のアルバムをセットにしたボックス・セットだ。失礼ながら初期の5枚をきっちりと聴いている日本のファンもそう多くはないと思われるので、さらに奥深き4作をセットにした本作品はかなりハードルが高い。とはいえ、まずハーヴェスト盤から始めるといってもこの4作にたどり着くのは大変なので、もし彼らに興味を持った方がいたら、この機にこの70年代後半〜80年代にかけての音源を聴いて見てはいかがだろうが。実はかくいう僕も、エドガー・ブロートンのハーヴェスト期以外の作品をまとめてちゃんと聴いたのは今回が初めてで、その多様な音楽性に驚いた。まずエドガー・ブロートン・バンド=サイケ/アンダーグラウンドという概念は捨てよう。そしてキャプテン・ビーフハートやフランク・ザッパヘのイギリスからの回答くらいな感じで聴いてみるといいかもしれない。
このボックスに収録されているのは『Bandages』(75)、『Live Hits Harder!』(79)、『Parlez-Vous English?』(79)、『Superchip:The Final Silicon Solution?』(82)の4枚で、『Parlez-Vous English?』はブロートン兄弟がグループ解散後に結成したブロートンズ名義のアルバムで『Superchip:The Final Silicon Solution?』は彼らの最終作。その後彼らは再結成と解散を繰り返しながらもライヴ・アルバムを発表し続け、近年は兄のエドガーがソロでエドガー・ブロートン・バンドを名乗って活動している模様。(Q.I.)
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